書籍紹介「和銃の歴史」

『和銃の歴史』刊行によせて
 NHK大河ドラマ「麒麟が来る」の主人公は、織田信長に仕えた明智光秀である。我が国に鉄砲が伝来した戦国時代の物語である。信長・秀吉・家康へと、日本を統一した戦国大名が登場し、伝来した火縄銃の関与が、鉄砲愛好家には興味のあるところでもある。この大河ドラマの火縄銃についての指導は廣瀬一實氏である。氏は、国友鉄砲研究会に属し、日本前装銃(火縄銃)射撃連盟の会員で、火縄銃の実弾射撃や研究者として名高い。この時期に銃砲史学会では大変お世話になり、発表した報告書をやっとまとめることができた。『開陽丸艦長・澤太郎左衛門の生涯』に続き2冊目となる。澤太郎左衛門は幕臣であり、幕末のテクノロジストであり、長崎海軍伝習所においてオランダの近代砲術を学び、次いでオランダに渡り火薬製造法を習得し、日本海軍創設の基礎を創った人物で、本書は幕末から明治にかけてイギリスの技術を導入した初期の日本海軍について述べたものである。
 今回の『和銃の歴史』(文芸社、令和元年12月刊、税別1600円は、伝来した手銃としての火縄銃の世界の発達史と我が国に伝来し、いかにしてそれを受容し、日本国産の和銃を製造したかについて、主として銃身に使用された、たたら鉄の銃身の製造技術と発射機構(カラクリ)について、資料を基に検証したものである。さらに、欧米の近代銃の発達に伴って、たたら鉄製(和銃)銃身に限界があり、鉄鉱石史来の洋鉄に切り替えて、いわゆる村田銃の出現について述べた。
 次いで、散弾銃の製造について検証し、国産の和銃が明治初期において多数製造された。中でもミロク(本社・高知市)の和銃は世界的に名を高め、1992年バルセロナ五輪において渡辺和三がミロク5000Tを使って、クレー射撃で銀メダルを獲得した。和銃の優秀性はもとより、日本人の射撃技術の特技を示しているものと言えよう。火縄銃を持った秀吉の朝鮮出兵の銃士が"舟一杯の弾を撃てば名人になれるだろう"というジンクスは、今(現代では貨車一杯)も昔も同じようである。
 小生がチームドクター或いは監督としてオリンピックに参加して日本選手のメンタルトレーニングの開発に関与して、ピストル競技において金メダルを、クレー射撃(トラップ)で銀メダル、ライフル射撃で銅メダルを獲得したが、日本選手の射撃競技の適性を表しているものと思われる。最後に『和銃の歴史』の出版にあたり、銃砲史学会会員諸兄に感謝の意を表します。

タイトル:和銃の歴史 鉄砲伝来からオリンピックまで
著者:霜禮次郎 (しもれいじろう)
発行:文芸社
発行日:2019年12月9日
定価:1,760円 (本体 1,600円)
ISBN:978-4-286-16459-5
A5判上製176頁

銃の新事実!
元五輪代表監督にして日本前装銃連盟会長による50年の研究の集大成。
《日本に渡来した火縄銃のルーツを探るだけなら、「火縄銃」としておいたほうが視点ははっきりする。それをあえて「和銃」としたのは、渡来した火縄銃が日本の職人たちの手によって工夫を加えられ、進化・発展し、その先に新たな火縄銃が“創造”されたと考えるからだ》(「おわりに」より)。元オリンピック代表監督にして日本前装銃連盟会長による50年の研究の集大成。

この書籍は「日本銃砲史学会ニューズレター第7号」で紹介されています。