書籍紹介「田中久重と技術の継承」

会員の河本信雄さんが思文閣の佛教大学研究厳書の1冊として『田中久重と技術の継承』という本を上梓しました。田中久重は江戸末期に「からくり儀右衛門」と呼ばれ、時計や精密なからくり人形などを手掛けました。50歳を過ぎてから蘭学を学び、新しい西洋の技術を身に着け、現在の東芝の前身を立ち上げました。田中久重の生涯と彼の技術を継承した人々を紹介しています。

タイトル:田中久重と技術の継承 時計から からくり人形、そして電信機
シリーズ:佛教大学研究叢書
著者:河本信雄
発行:思文閣
刊行年月:2019年2月
定価:8,360 円(税込)本体 7,600円
A5判上製・286頁
ISBN978-4-7842-1960-5

内容
江戸後期から明治初期にかけ、職人としてからくり人形や万年時計と手掛け、技術者・起業家として実用電信機の製造を果たした田中久重(1799-1881)。

彼の生涯を追うことを通じて、日本の各地で活躍していた時計職人たちの技術が引き継がれ、からくり人形等に伝播し、さらに明治維新後は職人たちが技術者として電信機に代表される産業技術の近代化に貢献し、やがては今日のIT技術につながっていく【技術の継承】の実像に迫る。

【担当編集者より】
東芝の創業者の一人として「からくり儀右衛門」という名を聞いたことはありましたが、本書を担当してはじめて、儀右衛門こと田中久重が、近世から近代への転換期あって果たした役割や功績を知ることができました。なかでも齢五十を過ぎて蘭学を学び、蘭書原典も頼りにしながら電信機の製作に取り組んだというのには、ただただ驚くばかり。50代半ばでそろそろ終活……などと言っているわが身が恥ずかしいです。
先人の技術を土台にして、自らのクリエイティビティを育んでゆく――日本の技術者たちは皆、久重につらなる“地上の星たち”なんですね。


この書籍は「日本銃砲史学会ニューズレター第4号 書籍のお知らせ」で紹介されています。