銃砲入門 第3回「火薬(黒色火薬)」

皆さんがご存じの火薬でよく耳にするダイナマイトはノーベル賞で有名なアルフレッド・ノーベルが発明した火薬です。この火薬が発明されるまでは黒色火薬が使われていました。
火縄銃や大砲(大筒)には黒色火薬が使われています。黒色火薬は硝酸カリウム(硝石)、硫黄、木炭を主成分とする火薬です。
火縄銃の場合、装薬(黒色火薬)を巣口(銃口)から入れ、続いて巣口(銃口)から弾丸(鉛の丸い玉)を入れます。火皿には点火薬(黒色火薬)を少量入れます。厳密には装薬と点火薬の粒度(粒の大きさ)が違う場合もあります。引金を引いて火のついた火縄の先が火皿に打ち付けられるこにより点火薬に点火され装薬に着火することで弾丸(鉛玉)を発射します。
薬量は三匁筒火縄銃(口径約12mm)で弾の重さ約11gに対して黒色火薬2.6~2.8g(日本前装銃連盟による)となっていますが実際はもう少し多い薬量で撃っていたようです。
黒色火薬は音もさることながら大量の白煙がたちこめますので弾が飛んだ先が見えないくらいななります。
明治期の日本海海戦において開発された下瀬火薬(無煙火薬)は黒色火薬に比べ火薬が爆発した際の砲煙の発生が少なく、私が観た東宝映画「日本海大海戦」において日本海軍の艦船が下瀬火薬を使用した砲を撃った際に砲煙が少なく次から次と標準を定めて砲を撃っていたのに対し、ロシアのバルチック艦隊の艦船は当時まだ黒色火薬を使用していて砲を撃った際の砲煙が多く、砲煙が艦内からなくなるまで砲手の水兵が敵艦(日本海軍艦船)を確認することが出来ずに標準を定めるのに苦労していた描写が記憶に残っています。このようなことも日本海軍がロシアのバルチック艦隊を殲滅できた一つの要因と言えるのではないでしょうか。
火薬に関しては日本銃砲史学会栗原洋一事務局長が専門ですのでホームページに掲載された寄稿記事をひとつ紹介いたします。
また日本銃砲史学会第417回12月例会において日本銃砲史学会会員でもある日本薬科大学客員教授の野澤直美氏が「硝石づくりの史学的調査」を研究発表され、日本銃砲史学会第417回12月例会においてカヤク・ジャパン株式会社の中村聡磯氏が「黒色火薬の歴史と製造方法」を研究発表されていますのでご覧いただき火薬についての知識を深めていただければと思います。